2人組のバンドはカッコいいって話
ロックバンドって、普通は4人か5人編成だ。ボーカル、ギター、ベース、ドラム——これが「完成形」とされている。キーボードが入れば5人、ツインギターなら6人、なんてバンドもいる。
でも個人的に、どうしても惹かれてしまうのが2人組のバンドだ。
2人。ただの2人。それでステージに立って、ライブハウスの音を満たす。サポートメンバーを入れるバンドもいるけれど、本質的には「2人で鳴らす音楽」として成立している連中がいる。これがもう、めちゃくちゃかっこいい。
編成が少ないってことは、1人あたりの責任が重いということだ。ギタリストがミスれば、それを隠してくれるメンバーはいない。ドラマーがテンポを外せば、バンド全体が崩れる。にもかかわらず、彼らはその緊張感を武器にする。むしろ、少ないからこそ出せる音圧、少ないからこそ生まれる関係性がある。
今回は、そんな「2人組バンドのかっこよさ」を体現するインディー寄りの日本のバンドを紹介したい。メジャーで売れまくっているバンドじゃなくて、知っている人は知っている、そういう渋い連中を中心に。
ドミコ
まず外せないのが、ドミコ。
2011年に埼玉で結成された、さかしたひかる(Vo./Gt.)と長谷川啓太(Dr.)の2ピースバンドだ。ジャンルはシューゲイズ、サイケデリック、ポストパンク、ガレージロック——どれかひとつに括るのが難しい、独自の音楽性を持っている。
ドミコの何がすごいかって、2人編成なのに**ライブで同期音源にほとんど頼らない**こと。ループ・エフェクターを駆使して、その場でギターフレーズを重ねていく。1人のギタリストが複数のレイヤーを生み出すから、ステージ上では2人なのに、音の厚みは4人バンドかそれ以上に聴こえる。
さかしたのボーカルも独特で、何を言っているのか一聴では聴き取れない。でも不思議と耳に残る。ルーズな発声、韻の踏まれた歌詞、ユニークなワードセンス——「くじらの巣」とか「深層快感ですか?」とか、タイトルだけで引き込まれる感じ。本人は「シューゲイザーやサイケとカテゴライズされるのは好きじゃない」とインタビューで語っていて、ジャンルに収まりきらない自負が感じ取れる。
2025年にドラムの長谷川が脱退したというニュースがあって、今後はサポートメンバーを迎えてバンド活動を続けるとのこと。どう変化していくのか、目が離せない。
Lucie,Too(ルーシートゥー)
個人的に今めちゃくちゃ推したいのが、Lucie,Too。
栃木出身のガールズバンドで、もともとは3人編成だったけれど、メンバーチェンジを経てChisa(Vo./Gt.)とヒカリ(Dr.)の2人体制に。2人になってからの1stアルバム『Fool』は、それまでのポップ路線から一歩踏み込んだ、パワフルなオルタナティブロック寄りのサウンドになっていて、これが本当に良い。
Lucie,Tooが面白いのは、日本のインディーシーンに留まらず、海外で積極的に活動していること。北米ツアー、タイ、台湾の野外フェスなど、日本の2ピースバンドとしては異例のレベルでインターナショナルに活動している。日本のライブハウスシーンだけで完結しない、グローバルな2ピースという視点は、これからのバンドの在り方としてかなり示唆的だ。
Chisaの歌声はキュートさを残しつつ、楽曲は結構骨太。甘いだけじゃない、どこかにザラついた手触りがある。それが2人編成のタイトさとマッチして、彼女たちにしか出せない空気を作っている。
RiL
そしてもう1組、絶対に聴いてほしいのが町田発のRiL。
Shusei(Vo./Gt.)とUrara(Dr.)の男女混成2ピース・ロックバンドで、2018年1月結成。結成してすぐの年に、”FUJI ROCK FESTIVAL ’18″の”ROOKIE A GO-GO”や、洋楽ラインナップがメインの”Vans Warped Tour Japan”に抜擢されている。新人バンドとしては、かなり異例のスタートだ。
彼らの音は、90年代のSub Pop RecordsやAmphetamine Reptile Recordsのバンドたちを想起させるヒリヒリした空気感を持っている。グランジ、サイケ、オルタナティヴが入り乱れた、乾いた手触りのロック。代表曲「IGGY & BIGGIE」のMVは、初見で度肝を抜かれること間違いなしだ。「本当に2人しかいないの?」と思わず確認してしまうほどの音圧がある。
ボーカルのShuseiは前身バンドでアメリカ、イギリス、フランスの海外ツアーを経験している一方、ドラムのUraraは結成当時まだ高校生。この経験値のギャップと、それでも成立するグルーヴが、RiLのユニークなところ。レコーディング・エンジニアにはSuchmosなどを手がけた藤井亮佑を起用していて、音作りへのこだわりも並じゃない。
インディーの匂いを残したまま、海外志向のセンスを持っている。こういうバンド、日本にはなかなかいない。
LAUSBUB
ここまでギター/ベース/ドラムのバンドばかり紹介してきたけれど、電子楽器主体の2ピースもこの記事には入れたい。札幌のLAUSBUB(ラウスバブ)だ。
岩井莉子(Syn./Gt./DJ/Electronics)と髙橋芽以(Ba./Vo.)の2人組で、2020年3月、札幌の市立札幌新川高校軽音楽部に所属していた高校生2人が結成。バンド名はドイツ語で「いたずらっ子」を意味する。
2021年1月にTwitterに投稿された楽曲がきっかけで話題となり、ドイツの音楽プラットフォーム”SoundCloud”で全世界ウィークリーチャート1位を記録。国内の”Eggs”でもウィークリー1位。当時現役女子高生、しかもYMOへのガチなリスペクトを全面に出したニューウェーブ/テクノポップ/インダストリアル・グルーヴ——親世代の音楽を、新しい世代が鮮烈に再解釈してくる衝撃は相当だった。
岩井がトラック制作、髙橋がボーカルを担当する役割分担で、楽曲は基本的に岩井が作っている。「芽以が歌えば、LAUSBUBになる」という岩井の言葉が象徴的で、片方が作り、片方が声を乗せるという明快な関係性のなかで、あの独特の音世界が成立している。
2ピースという編成は、必ずしもロックバンドの専売特許ではない。LAUSBUBはそのことを教えてくれる。
ガラスの靴は落とさない
もう1組、札幌から。こちらは現時点でおそらく一番マイナー、でもめちゃくちゃ応援したいバンド。ガラスの靴は落とさない。
おやすみちゃん(Vo./Gt.)とるな(Ba.)の2ピースガールズバンドで、2023年10月結成。大学時代に軽音サークルで出会った2人は、卒業後に看護師となり、現役看護師をしながらバンド活動を続けている。「音楽のない生活がつまらないから、『やっちゃうか』と軽いノリで始めた」という結成エピソードが、すでに彼女たちの空気感を物語っている。
日勤も夜勤もある看護師との両立は本当に大変で、夜勤明けでそのままレコーディングやライブに行ったり、日勤終わりにライブハウスに駆け込んだりという生活をしているという。それでも音楽を続けている事実に、こちらまで熱が伝わってくる。
楽曲は、「私らしく」「自分の好きなもの」を大切にしながら、”令和の女の子像”をポップなメロディとアグレッシブなロックサウンドに乗せて歌うスタイル。「片道切符」「君ってやつは本当に、」「Mr. FRIDAY」など、タイトルを見ただけでも青春の残り香のような切なさが漂う。
2025年12月には札幌Vypassで1stワンマンライブ『おてんば舞踏会』が開催決定。これから大きくなっていく匂いがプンプンする、まさに「今、出会っておくべき」バンドだ。
なぜ2人組のバンドは、かっこいいのか
ここまで6組のバンドを紹介してきた。それぞれ音楽性はバラバラ——シューゲイズ、オルタナ、ポップロック、90sオルタナ、テクノポップ、ガールズロック。でも共通しているものがある。
それは、「2人でしか鳴らせない音」がちゃんと存在しているということだ。
4人や5人のバンドが悪いわけじゃない。ただ、人数が増えれば増えるほど、音の隙間は埋まっていく。それはそれで豊かさにつながるけれど、同時に「個々の音の輪郭」が見えにくくなるという側面もある。
2人編成だと、そうはいかない。ギターの1音、ドラムの1叩き、シンセの1フレーズが、そのまま楽曲全体の印象を左右する。だから彼らは、1音1音を丁寧に、強烈に鳴らさざるを得ない。その切迫感と緊張感こそが、2人組バンドの最大の魅力だと思う。
あと、人間関係の濃さも外せない。2人だから、逃げ場がない。相手と向き合い続けるしかない。その分、2人の間に生まれる呼吸やグルーヴは、大所帯のバンドには出せない密度を持つ。ステージを見ていると、それがはっきり伝わってくる瞬間がある。
LAUSBUBの岩井と髙橋、ガラスの靴は落とさないのおやすみちゃんとるな、RiLのShuseiとUrara——どのバンドを見ても、2人の関係性そのものが音になっていると感じる。
少ない方が、むしろ強い
「人数が少ないから、できることが限られている」——これは2ピースバンドに対する表面的な見方だ。
実際には、逆だ。人数が少ないからこそ、工夫の余地が生まれる。ループ・エフェクターで音を重ねる、楽器の組み合わせを変える、編成の常識を無視する——こういう発想が2ピースから次々と生まれてきた。
ドミコの同期なしのループ技、Lucie,Tooのグローバル展開、RiLの90sリバイバル、LAUSBUBの電子音楽アプローチ、ガラスの靴は落とさないの看護師二刀流。全員、編成の少なさを弱点ではなく武器に変えている。
もし「新しい音楽を探したいな」と思っているなら、2ピースバンドを狙い撃ちで掘ってみるのはおすすめだ。編成がシンプルな分、音楽性の独自性が際立っているバンドが多い。プレイリストを組みやすいし、ライブに行ったら絶対に盛り上がる。
2人だからこそかっこいい。

