VII DAYS REASON|北九州の鋼鉄少年たちが鳴らす、雑食で不器用な等身大の12曲
「消しカス」。アルバムのリード曲のタイトルがこれ。この一語を見た瞬間、このバンドに少し興味を持った。名盤の看板に「消しカス」と書ける度胸。そこには、格好つけない、飾らない、自分たちの生活のザラザラした手触りをそのまま音にしようという意志が透けて見える。
VII DAYS REASON(セブンデイズリーズン)。福岡は北九州市で結成されたロックバンドだ。2025年10月8日、2ndフルアルバム『STEEL BOYS』をリリースした。前作『Spiky』から2年ぶり、全12曲入り。ボーカルはけんたま。バンド初となる東京・名古屋・大阪・福岡でのワンマンを含む全国ツアーも敢行し、明らかに次のフェーズへ踏み込もうとしている一枚。
『STEEL BOYS』、鋼鉄の少年たち。タイトルからして、不器用で硬派で、でもどこか青臭い。この矛盾した響きが、そのまま作品の中身を言い当てている。先に言っておく。これは器用なアルバムじゃない。だが、その不器用さこそがこのバンドの武器だ。
このアルバムを一言で表すなら「雑食」だ。バンド自身が「ジャンルレス」と公言している通り、12曲は本当にバラバラの方向を向いている。疾走するパンクチューンがあれば、妙にポップな曲があり、ユーモアで押し切る曲があり、しんみり聴かせる曲がある。統一感、という意味では正直まとまりに欠ける。
だが、それでいいと思う。このバンドが掲げているテーマは「人が育った場所や出会い・別れ」だ。故郷である北九州の営みを歌にする、という地に足のついた動機がある。人生ってのは、そもそもジャンルレスだ。楽しい日も、うまくいかない日も、くだらない日も、全部ごちゃ混ぜにやってくる。その雑多さをそのまま12曲に詰め込んだ結果がこのバラつきなら、これは欠点じゃなく誠実さだ。
ボーカルけんたまの声には、飾り気のない実直さがある。テクニックで圧倒するタイプじゃない。だが、うまくいかないことへの葛藤を信念で乗り越えようとする、その泥臭い熱量が声に乗っている。「消しカス」について本人が幼少期と今を重ねた歌だと語っている通り、このバンドは背伸びをしない。等身大で殴ってくる。そこに好感を持てるかどうかで、このアルバムの評価は割れるだろう。僕は、持てた。
Get Down
開幕から地を這うようなグルーヴで掴みにくる。「下がれ」ではなく「ノレ」の方のGet Downだ。アルバムの入口として体温を一気に上げる役割を果たしている。飾らない直球。これは正しい配置だ。
スカイフィッシュ
未確認飛行物体の名を冠した2曲目。実在するのかしないのか曖昧なアレをタイトルに持ってくるセンスに、このバンドの遊び心が出ている。疾走感がありつつ、どこか掴みどころのない浮遊感。1曲目の熱を受けて加速する。
Champions
先行配信されたシングルの一つ。タイトル通り、拳を突き上げる系のアンセムだ。わかりやすく高揚する。ライブでの合唱を明確に想定した作りで、狙いは成功している。ただ、狙いが見えすぎて少し優等生的にも感じる。悪くはない。
トランジット
乗り換え、通過。移動の途中を切り取ったようなタイトル。アルバムの流れの中で一度風景を変える役割を担っている。アッパーな曲が続いた後にこれが来ることで、呼吸ができる。構成上の効き所だ。
シルバーベリー
グミの木の実の名前。こういう何気ない言葉を拾ってくるところに、このバンドの生活感が滲む。派手さはないが、じんわり沁みるタイプの一曲。埋もれそうで埋もれない、地味だが芯のある曲だ。
消しカス
リード曲にして本作の核。けんたまが幼少期と今を重ね、うまくいかないことへの葛藤を信念と情熱で越えようとする日々を歌った、と語る通り、情念がこもっている。「消しカス」というみっともないモチーフを、そのまま自分の不器用さの象徴にしてしまう強さ。これは刺さる。アルバムのタイトルに「STEEL BOYS」を選んだ理由が、この曲を聴くとわかる気がする。
DALI-LADA
ダリ・ラダ、と読む。シュルレアリスムの画家を思わせる不穏な語感。本作の中では実験色が強めで、ここでバンドが冒険している。全曲直球だと単調になるところを、こういう変化球が引き締めている。挑戦の一曲だ。
Bite Me
先行配信シングル。「かかってこい」の挑発的なタイトル通り、攻撃性の高いナンバー。歯を剥き出しにするような荒々しさがあり、ライブで確実に沸くだろう。ただ、この手の攻めの曲は他バンドにも多く、VII DAYS REASONならではの個性という点ではもう一歩踏み込みが欲しい。ここは惜しい。
ビルの隙間の革命
本作屈指のタイトルセンス。都会の片隅、ビルとビルの狭い隙間で起こる小さな革命。大それた革命じゃなく、名もなき人間の日常的な反抗を歌う視点が、このバンドの本質を突いている。地方から出てきた者の目線が効いている。これは効いている。
羅針盤
2025年4月から連続配信された先行シングルの一つ。進むべき方向を探す、という王道のテーマを、衒いなく歌い上げる。ベタと言えばベタだが、このバンドがやると嘘くさくならない。等身大だからこそ、道に迷う歌が説得力を持つ。
ROAD
羅針盤の次にROADを置く構成は、少々図式的すぎる気もする。方角を探して、道を進む。わかりやすいが、わかりやすすぎる。曲自体は熱いが、並びの意図が透けて見えてしまうのが少しもったいない。
LOVE DISASTER
愛の災害、で締める。ラストにこの不穏なタイトルを持ってくるのが、優等生で終わらせない彼ららしい。きれいにまとめず、少し引っ掛かりを残して幕を閉じる。この収まりの悪さが、逆にアルバムの余韻になっている。締めとしては悪くない選択だ。
良かった点
最大の美点は、飾らない等身大の姿勢だ。「消しカス」「ビルの隙間の革命」といったタイトルに象徴される、格好つけない生活者の視点。地方(北九州)から音を鳴らす者の、地に足のついた実感がある。加えて、ジャンルレスな雑食性。12曲が多方向を向いているぶん、聴いていて飽きない。そしてボーカルけんたまの、テクニックではなく熱量で押す実直な声。この三つが噛み合ったとき、このバンドは確かに光る。
物足りなかった点
一方で、雑食であることの裏返しとして、アルバム全体の輪郭がぼやけている。「これがVII DAYS REASONだ」という決定的な一撃、名刺代わりの一曲が、まだ弱い。粒は揃っているが、突き抜けた飛び道具がない。加えて、後半の「羅針盤→ROAD」の並びに見られるような、構成の図式的な部分。狙いが見えすぎる瞬間が散見される。器用にまとめようとした結果、彼ら本来の不器用な爆発力が削がれた箇所があるのは否めない。
どんな人に刺さるか
地方でくすぶった経験がある人、格好つけたロックに白けてしまう人に刺さる。飾らない歌詞、生活の手触り、名もなき日常の反抗。そういうものに弱い人にとって、このアルバムは友達みたいな一枚になる。逆に、圧倒的なテクニックや洗練された世界観を求める人には物足りないかもしれない。これは巧さで聴かせるアルバムじゃない。体温で聴かせるアルバムだ。ライブハウスの汗の匂いが好きな人ほど、深くハマる。
評価
6点/10点
厳しめに見える点数かもしれない。だが、これは伸びしろへの期待を込めた6点だ。楽曲の水準は総じて高く、「消しカス」「ビルの隙間の革命」のような光る曲もある。しかしアルバムとしての突破力、「このバンドでなければ」という決定打がまだ足りない。雑食性が個性であると同時に、焦点のぼやけにもなっている。次のアルバムで、この雑多なエネルギーを一点に集約できたとき、彼らは化ける。今はまだ、鋼鉄になりきる前の、熱された鉄の状態だ。だからこそ、これからが面白い。
締め
「消しカス」なんてタイトルを堂々と掲げるバンドを、僕は嫌いになれない。うまく消せなかった、書き損じた、みっともない痕跡。それを恥じるどころか、そこにこそ自分たちの真実があると信じて音にする。北九州の片隅で、ビルの隙間で、彼らは小さな革命を起こそうとしている。まだ鋼鉄には遠い。熱くて、柔らかくて、形が定まりきっていない。だがその不完全さこそが、今この瞬間の彼らの魅力だ。鍛えられて硬くなる前の、この熱を、僕はしばらく追いかけていたいと思う。
ではまた。

