こんにちはmonaです。

就活、しんどいですよね?

エントリーシートを夜中まで書いて、朝早く起きて慣れないスーツに袖を通し、初対面の大人に「あなたの強みは?」と聞かれる。GD(グループディスカッション)で他大学の見知らぬ就活生と「協調性アピール合戦」をして、面接で深掘りされて、お祈りメールを受け取る。この一連のループ、構造的にメンタルがすり減るようにできている

そんな夜、Spotifyで「就活 応援ソング」って検索したことある人、たぶん多い。プレイリストには、「夢は必ず叶う」「君ならできる」「諦めなければ報われる」——そんな歌詞の曲が並んでいる。

で、聴く。

聴いて、どう感じるかというと、正直、ちょっとしらけた

「夢は必ず叶う」というワードが、なぜダサく聴こえるのか

応援ソングの歌詞でよく出てくる「夢は必ず叶う」「頑張れば報われる」というフレーズ。これがなぜ、就活でボロボロになっている人間の耳に届かないのか。

理由は単純で、嘘だからだ。

夢は必ずしも叶わない。頑張っても報われないことの方が、人生では多い。就活している本人が、それを一番わかっている。だから「必ず叶う」と歌われると、心のどこかで「いや、叶わなかったらどうすんねん」とツッコミが入る。慰めようとして、逆に距離ができるワード。

これ、バンドマンがライブのMCでたまにやる「名前だけでも覚えて帰ってください」と同じ匂いがする。保険をかけて、ハードルを下げて、当たり障りのない場所に着地する——その慎重さがダサい。本気で観客を持ち帰りたいなら、もっと強い言葉で殴ってきてほしいし、本気で応援したいなら「夢は叶うかわからんけど、しんどい時はある」くらいのリアリティがほしい。

応援ソングの「必ず」は、書いた本人が一番信じていないんじゃないかと疑ってしまう。置きにいった励ましほど、当事者には届かないものはない。

必要なのは「応援」じゃなく「共感」

じゃあ、就活でメンタルが削れている時、何を聴くと救われるのか。

僕が辿り着いた答えは、共感できる曲だ。

わかる」と思える曲。
この苦しさ、自分だけじゃないんだ」と気づける曲。
世の中の理不尽、お前もそう思ってたんだな」と肩を組める曲。

これは精神論じゃなく、人間は「励まされる」より「理解される」方が回復するという、わりと普遍的な話だと思っている。失恋した友達に「次があるよ!」と励ますより、「それはきついわ……」と一緒に黙り込んだ方が相手は救われたりする。応援ソングはどうしても前者になりがちで、共感曲は後者をやってくれる。

恋愛ソングを聴いて「わかる〜」って言いたくなる感覚、ありますよね。あれの就活版。御社の理念に共感しましたって、本当は3社目から使い回してる」みたいな現実を歌った曲があれば、明日も面接行ける気がする。僕らに必要なのは、そういう曲だ

ということで、ここからは就活生・新社会人・社会人の気晴らしになる、共感系の邦ロック5組を紹介していく。応援はしない。ただ、隣に座る。

insomnia girl / 10分前後の戦争

タイトルがもう、就活経験者には刺さる

10分前後——これ、面接の標準時間だ。10分という短い時間で、自分の22年間を要約し、志望動機を熱量込めて伝え、逆質問でガクチカを補強し、「当社じゃなくてもいいのでは?」という揺さぶりを切り返す。完全に戦争

この曲が描くのは、「御社じゃなくてもいいけど、内定がほしいから御社って言ってる」という、就活生なら誰もが心の奥にしまっている本音だ。みんな多かれ少なかれ、そういう嘘をつきながら面接を渡り歩いている。それを正直に歌詞にしている時点で、もう信頼できる

「あなたを選んだ理由」「将来のビジョン」「10年後の自分」——面接官が好きな質問に、満点回答を作って暗唱する就活。あの空虚さを、insomnia girlは茶化したり美化したりせず、そのままの体温で歌う。リアルすぎて、聴いてる方が「自分のこと言われてる」と背筋が伸びる。

頑張れと言われるより、「お前も嘘ついてんな、わかるよ」と肩を叩かれる方が、不思議と次の面接に向かえる。これがこの曲の効能だ。

Jam Fuzz Kid / Welcome to me

これはスカッと系

Jam Fuzz Kidは、ガレージ/オルタナの匂いをまとった、勢いで持っていくタイプのバンド。「Welcome to me」のMVを観ていると、就活で固まりすぎた肩がほぐれていく。「Welcome to me」——「ようこそ、俺の世界へ」というタイトルだけで、もう人生の主導権を取り返せそうな気がする。

歌詞はちょっと色っぽい。けれどMVのテンションと曲の疾走感で、「不真面目」と「カッコよさ」の境界を綺麗に踏み越えていく。スーツを着てネクタイを締めて、敬語を間違えないように気を張っている毎日の中で、こういう「ふざけてるけどカッコいい」を浴びる時間は本気で大事だ。

就活って、自分を企業好みのフォーマットに切り詰めていく作業でもある。だからこそ「俺の世界にようこそ」みたいに、主語が完全に自分の曲を聴くと、削られた自我がちょっと戻ってくる。

面接、こんくらいの感覚でいいか」——そう思える勇気を、この曲はくれる。

変わる変わる変わる。 / 堂々巡りのその果てに

メロディーはポップで、踊れる。けど歌詞の角度が、地味に深い

「堂々巡りのその果てに」——これ、就活そのものじゃないですか。ESを書いて、出して、落ちて、書き直して、また出して、また落ちる。同じことをぐるぐる繰り返しながら、本当に意味あるんだろうか?と問い続ける日々。完全に堂々巡り

このバンドが面白いのは、その堂々巡りに対して「頑張れ」とも「諦めろ」とも言わないところだ。「世の中、上手く生き抜け、でも無理はするな」——両方の方角を同時に指してくる。矛盾しているようで、たぶんこれが一番正直なアドバイスだ。

頑張りすぎると壊れる。でも頑張らないと進まない。その間を、ふらつきながら歩いていくしかない。そういう人間の現実を、ポップなメロディーに乗せてサラッと歌ってくる。説教臭くないのが偉い。

聴き終わった後、「無理しない範囲で、もうちょいだけ頑張るか」と思える。応援ソングではないけど、結果的に背中を押されている。この温度感が、就活期に一番合う

おかえりヒーローズ / わーお

これは新社会人〜社会人2〜5年目にこそ刺さる。

タイトルだけ見ると牧歌的に見えるけど、中身は「世の中の理不尽」を真正面から歌うロックだ。世の中の理不尽を歌う曲は珍しくない。けれど「仕事の理不尽」を歌う曲となると、意外なほど少ない。ここ、ぽっかり空いた市場だと思う。

社会人になると気づく、「上司の機嫌で評価が変わる」「クライアントの理不尽は飲み込む側が負け」「成果を出した人より声がデカい人が出世する」——こういうリアルって、学校では教えてくれないし、就活の説明会でも言ってくれない。入って初めて、ガチで殴られる

そういう時、「夢を諦めるな」とか歌われても、「いや、そういう話じゃないんよ」となる。必要なのは、「お前も理不尽を食らったんだな、わかるわ」と言ってくれる存在だ。おかえりヒーローズは、まさにその役割を引き受けている。

理不尽を歌うのは、文句を言うことじゃない。「これは理不尽だ」と名指す行為自体が、抵抗だ。おかしいことを「おかしい」と歌ってくれるバンドがいる——それだけで、月曜の朝のメンタルがちょっとだけ違う。

DOOKIE FESTA / merry-go-round

最後はDOOKIE FESTAの「merry-go-round」。タイトル通り、人生は回り続けるメリーゴーラウンドだ。

このバンドが描くのは、人間関係のしんどさ。仕事って、結局のところ「人付き合い」でできている。タスク自体は別に難しくなくても、気を使う相手がいるだけで一気に消耗する。あの会議室の空気、あの上司の独特の言い回し、あの取引先の地雷——実務より、人間の方が常に重い

でもこれ、逃げられない逃げたら次の場所でも別の人間が待っているだけ。だから「上手くつき合うしかない」というのが、社会人の最終的な結論になる。しんどいけど、やるしかない。この諦めとも覚悟ともつかない感情を、DOOKIE FESTAはバンドサウンドに乗せて歌う。

聴くと、「働いてる人みんなこれと戦ってんだな」と感じて、ちょっと仲間意識が芽生える。孤独感が一番効くのが社会人のしんどさで、「みんなしんどい」と思えるだけで、回り続けるメリーゴーラウンドにもう一周だけ乗っていられる。これも立派な救済だ。

応援は卒業しよう

ここまで5組紹介してきた。

並べてみるとわかるけど、どのバンドも「頑張れ」とは言わない。代わりに、「お前のしんどさ、こっちも知ってるよ」と歌ってくる。

僕は今、これを書きながら考えている。そもそも応援って、誰のためにあるんだろう

応援ソングが必要とされる場面って、たぶん「応援したい側」の方の都合で多く生まれている気がする。励ます方は気持ちいい。「夢は叶う」と言うことで、自分も少し希望を信じられる。でも、励まされる側は、その綺麗事に少しだけ疎外感を覚えている——そういう構造がある。

就活でしんどい時、社会人で潰れそうな時に、本当に必要なのは「お前は一人じゃない」という保証じゃない。「みんなしんどい、お前もしんどい、それは変じゃない」という横並びの現実認識だ。上から目線の励ましより、横から肩を組んでくる共感の方が、ずっと長持ちする

応援ソングが悪いと言いたいわけじゃない。朝起きて気合い入れたい時のテンションブースターとしては優秀だし、ポジティブな曲を浴びたい瞬間も人生にはある。ただ、就活や社会人生活の一番つらい部分は、応援じゃ救えない。あれは共感でしか救えない領域だ。

まとめ——「わかる」と歌ってくれるバンドを、味方につけてほしい

応援ソングはもういい。

代わりに、世の中のしんどさをそのまま歌ってくれるバンドを、プレイリストに何組か入れておいてほしい。朝の電車で、面接前のカフェで、面接終わりの夜道で——そんな曲があるかないかで、メンタルの持ち方は確実に変わる。

世の中の理不尽、人付き合いのしんどさ、嘘の志望動機、堂々巡りの自己分析、社会人の倦怠感——ロックは本来、こういうものを歌うのが得意なジャンルだったはずだ。綺麗事を歌うのはJ-POPに任せて、ロックは引き続き、現実を斜めから刺してくれる存在でいてほしい

今回紹介した5組は、いずれも「無理に元気にしない」スタンスで音楽を作っているバンドたち。だからこそ信頼できる。全力で寄り添ってくる代わりに、現実を一緒に眺めてくれる——そういう距離感が、就活期にも、社会人になってからも、わりと長く効く。

「夢は必ず叶う」と歌われて元気が出るなら、それでいい。
でも、それで元気が出ないなら、「夢は別に叶わなくてもいい、今日を生き延びろ」と歌ってくれる側のバンドを聴こう。

応援はもういらない。共感が、ほしい。

ではまた。