しゃがれた声の人はバンドやったほうがいいよ?
こんにちはmonaです。
ちょっと聞いてほしいんですけど、しゃがれた声ってロックに対してある種の「反則」じゃないですか。
クリアで高い声ももちろん武器になる。でも、しゃがれた声には、何年もかけて体に刻み込まれた傷とか哀愁みたいなものが乗っかってくる。それがロックやブルースの持つ「人間のどうしようもない部分」とぴたりと一致する瞬間、もう理屈じゃなくなる。
今回はそんな、しゃがれ声・ハスキーボイスを武器にしたバンドを7組紹介します。どのバンドも、声だけじゃなくて音楽そのものが最高なので、ぜひMVから入ってみてください。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
まずはこれを聴いてくれ
正直、しゃがれ声バンドの話をするとき、このバンドを避けて通ることはできない。
1991年結成、2003年解散。チバユウスケ(Vo)、アベフトシ(Gt)、ウエノコウジ(Ba)、クハラカズユキ(Dr)の4人組ガレージロックバンド。略称は「ミッシェル」「TMGE」。ドクター・フィールグッドをはじめ1960〜70年代のパブロック・ガレージロックを血肉として取り込み、全員が細身のモッズスーツで決めてステージに立った。
チバユウスケの声のすごさって、一言では説明できないんですよね。前期は「ラフな酔っ払いがそのまま歌ってる」ような無防備な荒々しさがあって、それが後期に向かうにつれて「世界でも稀に見るレベルで叫べるボーカル」へと変貌していく。同じリフを繰り返しながら曲名をがなり倒すだけでサビが成立してしまう。しかもそれがカッコいい。チバユウスケというボーカリストはそういう人だった。
1998年の『ギヤ・ブルーズ』頃からそのサウンドは完全に別次元に突入し、横浜アリーナで前代未聞のオールスタンディング公演を行い、2003年には幕張メッセに約4万人を集めて解散した。ギタリストのアベフトシは2009年に急逝。だから再結成はもうない。それがなんとも言えずに切ない。
聴くならこのアルバム:『ギヤ・ブルーズ』(1998年)
後期ミッシェルの世界観の入口にして、日本のロック史に刻まれた一枚。チバの「危うい雰囲気を感じさせる声」が常軌を逸したスリリングさを放ち、アベのカッティングが容赦なく突き刺さる。初めて聴いたとき、「これが日本のバンドなのか」と思った人は多いはずだ。
a flood of circle
まずはこれを聴いてくれ
2006年東京結成の4人組ロックバンド。略称は「AFOC」「フラッド」。メンバーは佐々木亮介(Vo/Gt)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)。
このバンド、ひと言で言うなら「ブルースをやり続けることへの意地」みたいなものを感じるバンドだ。2009年にメジャーデビューして以来、ギタリストの失踪・脱退といった試練をくぐり抜けながらも、止まることなく転がり続けてきた。その生き様が音にそのまま出ている。
佐々木亮介の声は、しゃがれているだけじゃなくてメロディを「焦げつかせる」。「ミッドナイト・クローラー」「Dancing Zombiez」を聴けばわかる。あの歌声には反骨精神と哀愁が同居していて、聴いていると何かをかき立てられる。2026年に結成20年を迎えた今でも、現役でもっともカッコいいロックバンドのひとつだと思っている。
聴くならこのアルバム:『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』(2024年)
2024年8月の日比谷野音では全32曲・3時間超のライブを行うなど、デビュー15周年を経てひと回りもふた回りも大きくなったフラッドの今を刻んだ一枚。「虫けらの詩」をはじめ、ブルースを愛するバンドが辿り着いた先の景色がある。
Large House Satisfaction
まずはこれを聴いてくれ
東京を中心に活動する3ピースバンド。通称「ラージ」「LHS」。小林要司(Vo/Gt)と小林賢司(Ba)の兄弟が中心のバンドで、もともと「ルンペナー」というバンド名で活動していたがLarge House Satisfactionに改名。
このバンドのボーカル・小林要司の声、初めて聴いたとき「喉にアンプが入ってるんか」と思った。それくらいデカくて強くて凶悪な声だ。本人も「しゃがれ声って俺の中での大きな武器」と語っていて、自覚はあるらしい。一般的な意味での「歌の上手さ」とは別の話で、あの声に一度やられたら抜け出せない。
超強烈なしゃがれ声、尖った退廃的な歌詞、ハードなサウンドの3点セットで、ROCK IN JAPAN FESTIVALやCOUNTDOWN JAPANなど大型フェスにも出演してきた。ライブが特に凄まじいので、音源を聴いて気に入ったらとにかくライブに行ってほしいバンド。
聴くならこのアルバム:『HIGH VOLTEX』(2013年)
「近年稀に見る、狂気とふてぶてしさに心奪われる」という言葉がそのままのフルアルバム。シングル『Traffic』の再ミックス版を含む11曲。ザ・イエローモンキーやミッシェルの音源を手掛けたエンジニアが録音を担当しており、3人の演奏が持つ音のパワーが最大限に引き出されている。
hotspring
まずはこれを聴いてくれ
大分県別府市出身のロックバンド。バンド名はそのまま「温泉」。2007年に中学の同級生たちで結成し、その圧倒的なライブが口コミで話題になり2010年に上京、浅井健一(BLANKEY JET CITY)が主宰するSEXY STONES RECORDSよりデビューした。
「大分別府から来たロックバンド」というだけでなんか好きになってしまうんですよね。しかも浅井健一に見初められて、ARBAKIやJOIN ALIVEの大型フェスにも出て、チバユウスケや浅井健一と「BIG BEAT CARNIVAL」でセッションまでやってる。その経歴がすでにドラマティックだ。
ボーカル・イノクチタカヒロの声には哀愁がにじんでいて、日本語ロックンロールの系譜をそのまま体に宿したような人だと思う。メンバーチェンジを繰り返しながらも現在も活動を続けており、2024年には新EP「ANTHEM VOLT」をリリースしている。
聴くならこのアルバム:『THREE MINUTES GOLD』(2014年)
浅井健一主宰の新レーベル「FICK FILLY」から第1弾としてリリースされた2ndアルバム。「爆音の中で黄金を見たか」とロックンロールのカタルシスを渇望する「ゴールド」が特に刺さる。THE ROOSTERSのカバー「FADE AWAY」も収録。ミッシェルやルースターズを好きな人なら間違いなく響く一枚だ。
THE PINBALLS
まずはこれを聴いてくれ
埼玉出身の4人組バンド。古川貴之(Vo/Gt)、中屋智裕(Gt)、森下拓貴(Ba)、石原天(Dr)。2006年結成から2021年の活動休止まで、一度もメンバーが変わらなかった。それだけでこのバンドの強さがわかる気がする。
バンド名はBLANKEY JET CITYの「死神のサングラス」とThe Whoの「ピンボールの魔術師」に「ピンボール」という言葉が共通していたことから命名。そのルーツの繋がり方がすでにカッコいい。ミッシェルやブランキーに影響を受けながら、さらに60年代のブリティッシュ・ビートまで遡っていったような独自のガレージロックを作り上げた。
古川貴之のハスキーボイスは「刹那に魂を刻みつけるような声」と評されるんだけど、それだけじゃなくて歌詞が本当に独特で。古い伝承や名作文芸・映画の世界観を連想させる幻想的な言葉が、あのハスキーな声に乗ると異様にハマる。2021年に活動休止後、古川は「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」として活動中。
聴くならこのアルバム:『時の肋骨』(2018年)
「時」をテーマにした全12曲の完全コンセプトアルバム。アニメ「伊藤潤二コレクション」のOPテーマ「七転八倒のブルース」を収録。ジャケットを含むアートワークの細部までこだわり抜いた一枚で、ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOMはSOLD OUT。一度聴いたら忘れられないアルバムになると思う。
ビレッジマンズストア
まずはこれを聴いてくれ
名古屋出身の5人組ロックバンド。水野ギイ(Vo)、岩原洋平(Gt)、荒金祐太朗(Gt)、ジャック(Ba)、坂野充(Dr)。2012年にミニアルバム『亡霊よ、爆発しろ』でデビュー。
このバンドの自己紹介が「焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す、名古屋が生んだロックンロール暴れ馬」なんですよ。もうそれだけで全部伝わりませんか。トレードマークの真っ赤なスーツを着て、あのベビーフェイスから放たれるソウルフルで艶やかな声と、ツインギターの激情的なサウンドが重なると、ライブが本当に祭りになる。
水野ギイの声は「いぶし銀」という言葉が一番近いかもしれない。荒削りなしゃがれ声ではなく、ロックをベースに歌謡曲のメロディを混ぜ込んだような独自の質感。歌詞も秀逸で、かつて根暗だったり鬱屈した思いを抱えていたすべての人間の心に容赦なく刺さる詩世界を持っている。
聴くならこのアルバム:『愛とヘイト』(2021年)
2ndフルアルバム。「猫騙し人攫い」「御礼参り」など、ライブアンセムが並ぶ全12曲。コロナ禍への恨みをすべてぶつけたような凄まじいパワーがあって、「こんなカッコいいバンドだったっけ」と聴くたびに思わされる。ロックンロールバンドとして深みを増した、間違いなく代表作。
climbgrow
まずはこれを聴いてくれ
滋賀県出身の4人組ロックバンド。杉野泰誠(Vo/Gt)、近藤和嗣(Gt)、立澤賢(Ba)、谷口宗夢(Dr)。バンド名は「成り上がり者」を意味する造語。2012年に結成し、2014年の10代限定ロックフェス「閃光ライオット」で準グランプリを獲得して一気に注目を集めた。
このバンドを紹介するとき、どうしても「メンバーが1996年生まれ」という事実を先に言いたくなる。なんでその年齢でチバユウスケみたいな声が出るんですか、という話なんですよ。ブルージーで嗄れた杉野泰誠の声は、チバユウスケやYellow Studs・野村太一を彷彿とさせると言われていて、実際にそう感じる。でもちゃんと「climbgrowの声」としての個性があって、それがまたいい。
人間味溢れるストレートな感情を綴った歌詞と、テクニカルかつ圧倒的な演奏力が特徴で、2020年にメジャー1stアルバム『CULTURE』をリリース。2025年3月には新アルバム「EL-MAR」も届けてくれた。
聴くならこのアルバム:『CULTURE』(2020年)
メジャー1stアルバム。傍若無人なロックンロールからミディアムな歌ものまで、バンドの音楽的振り幅をこれでもかと見せつける11曲。「TIGHT ROPE」「極彩色の夜へ」など、ライブで映える曲が揃う。「こういう音楽がこれからカルチャーになればいい」という杉野の言葉がタイトルに込められた、挑戦的な一枚。
まとめ
しゃがれ声って、努力して手に入れるものじゃない。気がついたらそこにある、天から与えられた武器みたいなものだと思う。
でも、その声をバンドに持ち込んだとき、何かが変わる。ブルースの哀愁と混ざり合って、歌詞の重みを倍にして、ライブのグルーヴを底上げする。ミッシェルのチバユウスケが打ち込んだ杭の後を追うように、フラッドの佐々木亮介、ラージの小林要司、climbgrowの杉野泰誠が、それぞれ自分たちの「しゃがれ声×ロック」を作り上げてきた。
もし自分の声がしゃがれていて、コンプレックスに感じているなら、それは完全に逆だ。その声はバンドをやるためにある。
今回紹介した7バンド、1組でも気になったら今すぐMVを再生してみてください。
ではまた。

