残酷な事実をひとつ。school food punishment(スクールフードパニッシュメント)というバンドの新曲は、もう永遠にリリースされない。2012年に解散したから。

次に、もうひとつの事実を。そのボーカリスト・内村友美の歌声を、解散以来、ほとんど聴けていない。後継バンドla la larksも2019年から活動を休止したまま。あの声が当たり前に届いていた日々は、静かに終わってしまった。

だが——実は、この話に「続き」がある。喪失の物語かと思いきや、よく調べると、一筋の細い糸が今も切れずに残っているのだ。今日はSFPの解散の真相から、その糸の正体まで。あの声に一度でも撃たれたことのある人は、最後まで読んでほしい。未聴の人は、この記事を読み終わる頃には、SFPの曲を再生しているはず。

唯一無二、としか言いようのない声があった

school food punishmentは、2004年10月結成の4人組。内村友美(Vo/G・全作詞)、蓮尾理之(Syn)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)。生楽器とシンセサイザーの電子音を高密度に編み込んだ、知的でドラマチックなサウンドを武器に、東京のシーンを駆け上がった。

2007年の1stミニアルバム『school food is good food』から始まり、2008年の3rdミニアルバム『Riff-rain』ではタワーレコードのインディーズウィークリーチャート1位を獲得。インディーで足場を固め、2009年5月、シングル「futuristic imagination」でメジャーデビューを果たす。TVアニメ『東のエデン』のエンディングを飾ったこの曲で、彼らの名は一気に広まった。

このバンドの核は、間違いなく内村友美の声だった。凛として透き通り、それでいて壊れそうに儚い。冷静なのに、奥に熱を孕んでいる。楽曲の感情に深く没入しながら、同時にそれを一歩引いた場所から見つめているような、不思議な二重の温度。熱いのに、冷たい。近いのに、遠い。この矛盾の同居こそが、内村友美という歌い手の唯一無二たる所以だ。代わりは、いない。本当に、いないのだ。

「素晴らしいうちに終わりたい」——あまりに美しい解散理由

2012年2月、バンドは活動休止を発表。同年6月11日、内村の脱退に伴い解散が正式発表され、公式サイトは同日正午に閉鎖された。

衝撃だったのは、内村本人が語った理由だ。彼女いわく、SFPはとても歪(いびつ)だったからこそ素晴らしい音楽を残せた。だからその素晴らしいものが、素晴らしいうちに、終わりにしたかった——。不仲でも、セールス不振でも、行き詰まりでもない。「最高の状態のまま幕を引きたい」という、作家としての美意識による解散だった。

傍から見れば、これからさらに飛躍するというタイミングである。ファンの「まだ全然聴きたかった」という思いと、彼女の美学。その間で、今も折り合いのつかない人は多いだろう。だが、この潔さこそが内村友美なのだ、と納得するしかない部分もある。中途半端に続いて摩耗していくSFPなど、誰も見たくなかったのだから。

la la larks——二度目の物語と、二度目の停止

物語には続きがあった。内村はSFPの活動休止時、SFPのプロデューサーだった江口亮に声をかけ、2012年、新バンドla la larks(ララ・ラークス)を結成する。

この座組がすごい。江口は坂本真綾、ポルノグラフィティ、LiSA、いきものがかりなど、第一線のアーティストを手がけるアレンジャー/プロデューサー。さらにTHE YOUTHやLOST IN TIMEの三井律郎(G)、元Sadsのクボタケイスケ(B)、元GO!GO!7188のターキー(Dr)。確固たるキャリアを持つ5人が、内村の歌声のもとに集った。ありがちな「キャリア組の寄せ集め」とは一線を画す、本気のバンドだった。

デモ音源はFM局で次々オンエアされ、クラウドファンディングでは開始40日で目標を大幅超過。アニメ『M3〜ソノ黑キ鋼〜』のエンディングも担当し、結成5周年の2017年8月には待望の1stアルバム『Culture Vulture』をリリースする。SFP後半の音楽性にジャズの香りを溶かし込んだ、成熟のサウンド。あの声は、確かに帰ってきていた。

だが、2019年6月。内村の結婚と、ライブ活動休止が同時に発表される。扁桃腺の手術の際に、かねてからの体調不良を検査した結果、深刻な病ではなかったものの、治療に相応の時間が必要と判明したのだ。そして同年9月6日、TSUTAYA O-WESTでのラストライブ。そのタイトルは——「To Be Continued」。続く、と銘打たれた一夜を最後に、彼女の歌声は再び、公の場から消えた。

それでも、糸は切れていない——2021年の「事件」

ここからが、冒頭で予告した「続き」。

実は、活動休止後の2020年12月、ある発表があった。坂本真綾のデュエットアルバムの第4弾ゲストとして、la la larksの内村友美の名が告知されたのだ。そして2021年3月、坂本真綾×内村友美のデュエット曲「sync」がリリースされる。作詞は内村友美と坂本真綾の共作、作曲・編曲は江口亮。さらに同年の坂本真綾25周年記念ライブにも、彼女の姿はあった。

つまり——「二度と聴けない」は、半分本当で、半分嘘。バンドの新作は止まったまま。けれど、あの声そのものは、消えてはいない。ほんの一瞬、たった一曲とはいえ、確かに新録で蘇った。これを希望と呼ばずに何と呼ぶ。

休止発表の際、内村はファンへのコメントで、休んでいる間はこれまで以上に創作に意識を向ける、再び会えるときには新しい作品と一緒に戻ってきたい、と綴っていた。歌は歩いてきた人生が作るもの、だから自分の歌をもっと深めて戻ってくる——という趣旨の、力強い言葉とともに。あの「To Be Continued」は、社交辞令ではなかったのだ。

いま聴くべきCD、喪失を、最高の形で味わうために

待つ間、僕らにできることは聴くことだけ。これから入る人のための最短ルートを示す。

『amp-reflection』(2010年)——すべてはここから

SFPの1stフルアルバムにして、最高の入り口。『東のエデン』ED「futuristic imagination」の近未来的な疾走感が名刺代わりだが、真価は「4:59」や「パーセンテージ」のような、夜と明け方の狭間に染みる楽曲群にある。聴き終えたとき「自分は生きている」と思えた——そんなレビューが残るほど、聴き手の生に深く触れてくる一枚。電子音とバンドサウンドの編み込みの緻密さは、十数年経った今聴いても、まったく古びていない。

『Prog-Roid』(2011年)——「素晴らしいうち」の頂点

2ndにして最後のフルアルバム。タイトル通りプログレッシブに練り上げられた楽曲構造は、バンドの野心の最高到達点だ。シングル「RPG」収録。内村の言う「素晴らしいうちに終わる」の、その「素晴らしいうち」とは、つまりこのアルバムのことだったのだと思う。1stで惹かれたら、必ずここへ。

「How to go」(2011年)——終幕前の閃光

TVアニメ『UN-GO』オープニング。解散へ向かう時期の作品だからこそ宿る、ひりつくような輝きがある。ポップさと複雑さの均衡という点で、SFPの完成度が最も高い純度で結晶したシングルだ。

『Culture Vulture』(2017年)と「sync」(2021年)——その後の声を辿る

SFPを通過したら、la la larks唯一のフルアルバムへ。SFP時代の儚さと引き換えに、深い成熟が宿った歌声が聴ける。そして最後に、坂本真綾とのデュエット「sync」を。これが現時点で最も新しい、内村友美の歌声だ。時系列で辿れば、一人の歌い手の人生が、声の変化とともに立ち上がってくる。

まとめ——「To Be Continued」を信じて待つ

整理しよう。school food punishmentは「最高のうちに終わる」という美意識のもと2012年に解散した。la la larksも2019年から治療と創作のために休止中。あの声が日常的に届く日々は、確かに終わった。

2021年、歌声は一度だけ新録で蘇った。そして本人は「新しい作品とともに戻る」と言い残している。最後のライブのタイトルは「To Be Continued」。物語は、終わったのではない。止まっているだけ。

ファンにできるのは、残された音源を聴き続けること。そして、こうして語り続けること。あの歪で美しいバンドがいたこと。二度とない声があったこと。それを言葉にして積み上げておけば、いつか彼女が戻ってきたとき、その声は新しいリスナーの耳にも届きやすくなる。

まずは『amp-reflection』を、できれば深夜に、イヤホンで。あの声があなたの中で鳴り始めたら、それもまた、ひとつの「To Be Continued」だ。

ではまた。

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