「ロックバンドって、ボーカル・ギター・ベース・ドラムの4人組でしょ?」

そう聞かれて、何の疑いもなく頷いてしまうあなた。それ、立派な刷り込みである。

冷静になって考えてほしい。なぜ4人なのか。なぜ3人ではダメで、5人だと「ちょっと多くない?」と感じるのか。キーボードが入ると「ポップバンドっぽい」、サックスが入ると「ジャズっぽい」と勝手にラベリングしているの、誰だ。

結論から言ってしまうと、その答えは拍子抜けするほどシンプルである。「みんながそうしてきたから」。ほぼそれだけだ。

元凶はビートルズ、というよくある話

ロックバンド=4人組というイメージは、ほぼビートルズで確定した。リズムギター、リードギター、ベース、ドラム。この役割分担が「機能美」として世界中に伝播し、以降のロックバンドという生き物は、ほとんどこの鋳型に合わせて自分たちを成形していくことになる。

ここで興味深いのは、「4人だから完璧」という音楽的根拠が、実はあとから付けられた理屈にすぎないということだ。「人間の可聴域をバランスよくカバーできる」とか「最少人数で最大効果」とか、もっともらしい説明はいくらでも転がっている。だが、それを言うなら3人でも十分カバーできるし、6人ならもっと豊かになる。要するに、後付けの正当化なのである。

4人編成が「都合がいい」だけの話

レコード会社にとって、4人編成は実に都合がいい。

まず、ジャケット写真が撮りやすい。2列に並べても、台形に並べても、座らせても、絵になる。3人だとちょっと寂しいし、5人以上だとセンターが誰なのか曖昧になる。プロモーションする側の視点で見れば、4人というのは「キャラ立てしやすく、画面映えする最大公約数」なのだ。

次に、収益分配がシンプル。バンド内政治もシンプル。練習スタジオの予約もシンプル。ツアーバスの座席もシンプル。全部、運営上の都合である。「音楽的に最適だから4人なのだ」という建前の裏側で、こういう生活レベルの理由が積み重なっている。

つまり、4人編成という「王道」は、業界の都合と人間の認知のクセが結託して作り上げた、ただの慣習である。芸術上の必然性なんて、最初からない。

4人縛りを蹴飛ばしてきたインディーの猛者たち

ここからが本題だ。4人編成の呪縛にとらわれていない、というか、最初から無視しているバンドはいくらでもいる。

まずは羊文学。元々は塩塚モエカ、河西ゆりか、フクダヒロアの3ピースだったが、2025年末にドラムのフクダが脱退し、現在は塩塚と河西の2人体制となった。3人でも十分異形だったのに、2人になっても「羊文学らしさ」は何も損なわれていない。むしろ、塩塚の声と河西のベースという最小単位で世界が成立してしまうことを証明したという意味で、これは一つの事件である。

そしてbetcover!!。柳瀬二郎が中学生時代にひとりで始めたソロプロジェクトが、活動しているうちにいつの間にか5人編成のバンドになっていた、というあまりにも自然体な拡張の仕方をしている。これは「最初に編成ありき」ではなく、「やりたい音にメンバーが付いてきた」だけの話だ。本来、バンドとはそういうものだろう、というシンプルな事実を体現している。

ceroもおもしろい。正式メンバーは髙城晶平、荒内佑、橋本翼の3人だが、ライブにはトランペット、サックス、パーカッション、別ドラム、ホルンといった面々が状況に応じて参加する。固定された「メンバー」という概念を、彼らはとっくに脱ぎ捨てている。

ポストロック界の重鎮toeは形式上は4人編成だが、そもそも歌をメインに置いていないインストバンドなので、「ボーカル+楽器隊」というロックバンドの基本構造そのものを破壊している。柏倉隆史の手数の多いドラムが、ボーカルがいるはずの場所をぐいぐいと埋めていく。

そして外せないのがあぶらだこ。1983年結成、変拍子とポリリズムの応酬、長谷川裕倫の異常な歌唱法。メンバーチェンジを繰り返しながら、編成すら流動的に変えてきたこのバンドは、「ロックバンドとはこうあるべき」という固定観念を最も鮮やかに無効化してきた存在だろう。

4人がダメなのではなく、4人「しか」がダメ

念のため断っておくが、4人編成が悪いわけではない。世の中の名盤の大半が4人組から生まれているのは事実だし、そこにバンドサウンドの一つの完成形があるのは間違いない。

問題なのは、「ロックバンド=4人」と無意識に決めつけて、それ以外の編成を「変則」「亜種」「異色」みたいな言葉で片づけてしまう、こちら側の貧しい想像力の方である。

3人でも、2人でも、5人でも、8人でもいい。ボーカルがいなくたっていい。ドラムが2人いたっていい。むしろ、4人組じゃないという理由だけで聴かずに見送ってきたバンドが、あなたの人生のサウンドトラックの最有力候補かもしれないのだ。

王道を疑え。マニュアルを破れ。ライブハウスの暗がりに、まだ名付けられていない編成のバンドが、たぶん今夜も鳴っている。

ではまた。

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