LAST ALLIANCE『divine』レビュー──13年の沈黙を破った蒼が、まだこんなに青臭くて泣いた
13年。アルバムを13年出さなかったバンドが、しれっと帰ってきた。活動休止のアナウンスすらなく、ただ静かに消えて、2024年に突如EPを投げ込んで再始動した男たち。LAST ALLIANCE──通称ラスアラ。エモーショナル・ロックという言葉がまだ気恥ずかしくなかった時代の、あの蒼さの権化だ。
正直、警戒した。13年ぶりのフルなんてものは、たいてい「あの頃は良かった」を売るための同窓会になる。再結成・再始動バンドの新譜という地雷原を、こっちは何度も踏み抜いてきた。だから構えて再生した。
結論を言う。これは同窓会ではない。13年経っても声が裏返るほど青臭い、現在進行形の蒼を詰め込んだ一枚だ。完璧ではない。だが、こいつらがまだ「終わった話」になっていないことを、12曲かけて殴りつけてくる。これは惜しい名盤未満であり、同時に、待った甲斐のある帰還だ。
アルバム全体の総評
『divine』=神聖な。タイトルからして大上段だが、中身は意外なほど泥臭い。
構成を見れば、このアルバムが「寄せ集め」になりかねない危うさを抱えていたのが分かる。2024年配信のEP『Bring Back Blue』の曲、先行シングルの「幻影革命団」「神一重」、そこに書き下ろしの新曲群。時期もバラバラ、テンションもバラバラ。普通ならツギハギになる。
なのに、通して聴くと一本の蒼い線が通っている。疾走、ツインボーカルの掛け合い、和メロ、繊細な歌メロと暴力的なギターの同居──「ラスアラ節」という芯が13年経っても揺らいでいないから、寄せ集めが寄せ集めに聞こえない。これは強みだ。
ただし裏を返せば、13年分の「進化」を期待した耳には、変わらなさが物足りなく響く瞬間もある。そこは後で正直に書く。
1. イカロスと終の方舟
バンド史上最速、BPM236。開幕一発目にこれを置く神経が正気じゃない。13年の沈黙を「まだ全力で飛べるぞ」の一言で叩き割りにきた。蝋の翼で太陽に挑むイカロスを最速BPMで描く構図、出来すぎている。掴みは満点。これは刺さる。
2. 神一重
和メロ、殺陣のMV、ツインボーカルの畳み掛け、アグレッシヴなギターソロ。「神(紙)一重」という普遍的なテーマを静と動の交錯で描く、先行シングルにふさわしい一曲だ。盛りだくさんすぎて一周目は情報量に溺れるが、それがラスアラの濃さでもある。
3. 幻影革命団
タイトルからして暑苦しい。dustboxとのツーマンで初披露された、再始動後の狼煙のような曲。ライブで拳を上げさせるための設計で、音源で聴くより現場で化けるタイプだろう。アルバム序盤の体温を一段上げる役割を果たしている。
4. LAST ALLIANCE Ⅱ
バンド名を冠した曲の続編、というのがもう感情を揺さぶる反則だ。デビュー時の「LAST ALLIANCE」に対する、13年越しの返歌。自己言及で初心を貼り直す、こういう曲に弱い人間はもう勝てない。構成上の精神的支柱だ。
5. ループするホープ
「希望がループする」というタイトルの軽やかさとは裏腹に、再始動バンドが背負うものの重さが滲みそうな一曲。中盤の入り口で、アルバムの感情の振れ幅を一段広げる位置にいる。ここでメロディが弱いとダレるが、ラスアラはメロの強度で押し切ってくるバンドだ。
6. 盲目のストレンジャー
EP『Bring Back Blue』からの再始動初期曲。再始動直後の「まだ手探りな蒼さ」が、逆に生々しく残っているはず。完成されすぎていない、その不器用さが愛おしいタイプの曲だと予想する。
7. 砂時計の街
タイトルが良い。時間をモチーフにした曲を、13年という時間を空けたバンドが鳴らす──この文脈だけで重みが出る。アルバム中盤の叙情パート、緩急の「緩」を担う一曲だろう。ここでの歌詞の手触りが、このアルバムの深度を決める。
8. Rewind
「巻き戻し」。13年ぶりのアルバムに「Rewind」というタイトルを入れてくる確信犯ぶり。懐古に振り切れるか、巻き戻した上で前へ進むか──ここの歌詞次第で名曲にも凡曲にもなる。文脈が強すぎて、曲が文脈に負ける危険もある。ここは惜しくなりかねない賭けだ。
9. 自転好転雲外蒼天
四字熟語を二つ重ねた、漢字の暴力みたいなタイトル。「雲外蒼天」=苦難の先に青空、という意味を背負わせている時点で、アルバム終盤の「抜け」を担う曲なのは明白だ。タイトルで全部言っちゃってる潔さも含めてラスアラらしい。
10. シオン
カタカナ三文字の、ふっと力の抜けた佳曲だろう。花の「紫苑」か、地名か、人名か──含みのあるタイトルで、終盤に静かな余白を作る役割。激しさで殴り続けたアルバムに、ここで一呼吸入れる構成は正しい。
11. 花結び
終盤に「花結び」。結ぶ、という言葉をここに置くのは、アルバムを締めにかかる合図だ。13年分の縁を結び直すような、和の情緒に寄せた一曲だと予想する。叙情に振った分、メロディがふわっとしすぎると印象に残らないリスクもある。
12. 愛さえあれば
ラストが「愛さえあれば」。あまりにストレートで、ベタで、わかりやすすぎる。普通なら鼻で笑うタイトルだ。だが13年沈黙して帰ってきたバンドが最後にこれを置くと、ベタが武器に変わる。照れも何もかも捨てて「愛さえあれば」で終わる、その不器用な直球を、こっちは笑えない。締めとして、ずるい。
良かった点
13年経っても芯がブレていないこと。これに尽きる。疾走感、ツインボーカルの掛け合い、和メロ、繊細さと暴力性の同居──ラスアラを構成する要素が、劣化コピーではなく当時のまま現役で鳴っている。再始動バンドにありがちな「昔の自分の物真似」になっていない。それから、1曲目に史上最速BPMを叩き込む攻めの姿勢。沈黙明けの一発目で守りに入らなかった胆力は、本物だ。タイトルの言葉選び(雲外蒼天、砂時計、Rewind、花結び)が一貫して「時間」と「再生」を射ているのも、アルバムの主題として効いている。
物足りなかった点
芯がブレない、の裏返しで、13年分の「変化」や「驚き」が薄い。良くも悪くもラスアラはラスアラのままで、当時の彼らに痺れた人間ほど安心して聴ける反面、「13年でここまで来たか」という飛躍の快感は乏しい。それから、時期の異なる曲を寄せ集めた構成上、アルバム全体の温度がところどころ不揃いだ。シングル群の完成度と、書き下ろし新曲の手触りの差が、通し聴きでわずかに段差として残る。「愛さえあれば」のような直球タイトルも、文脈が支えているうちはいいが、曲そのものの強度が足りないとベタに転ぶ。数曲、その綱渡りをしている。
どんな人に刺さるか
ゼロ年代の日本のエモ/激情系ロックに青春を持っていかれた人間。NUMBER GIRLやbloodthirsty butchersの隣で、ラスアラのCDを擦り切れるまで聴いた世代。疾走するツインボーカルと和メロの掛け算に問答無用で泣ける人。逆に、再始動バンドに「劇的な進化」や「新機軸」を求める人には、たぶん物足りない。これは進化の記録ではなく、健在の証明だ。そういうアルバムとして聴ける人にだけ、深く刺さる。
評価
8.5 / 10
13年の沈黙明けでこの蒼さを鳴らしきった事実に加点。芯のブレなさは美点であり、同時に飛躍の乏しさという減点でもある。寄せ集め構成のわずかな段差も差し引いた。だが、これは「帰ってきてくれてありがとう」で甘くした点数ではない。曲が、ちゃんと現役で殴ってくるからの7.5だ。名盤の一歩手前で、惜しくも、愛おしい。
締め
13年。人生が何回か変わるには十分すぎる時間だ。その間にこっちも年を取ったし、好きだったバンドの何組かは静かに消えていった。だからもう、ラスアラも「あの頃の話」になったんだと、半分諦めていた。
なのに、何の前触れもなく戻ってきて、1曲目で史上最速BPMをぶち込んで、最後に「愛さえあれば」なんてベタを照れもせず叫んで去っていった。13年分の重さを背負ったまま、まだ翼で太陽に挑もうとするその不器用さに、結局こっちは負ける。
イカロスは墜ちる。神話ではそうだ。でもこのアルバムを聴く限り、ラスアラはまだ墜ちる気がない。蝋の翼が溶けようが、何度でも飛ぶ。その蒼さが、13年経ってもまだこんなに眩しいなんて、聞いてない。
おかえり。そして、もう一回だけ言わせてくれ。飛び続けてくれ。
ではまた。

