4年である。前作『ANSWER』が2021年12月1日。そこから2026年3月4日の『Fire Inside Us』まで、約4年。結成2008年以来、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムを出し続けてきたこのバンドにとって、これは異例の沈黙だ。

Nothing’s Carved In Stone。村松拓(Vo/Gt)、生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)。ELLEGARDENの生形がストレイテナーの日向に声をかけ、FULLARMORの大喜多が加わり、生形がMySpaceで見つけたABSTRACT MASHの村松を口説き落として完成した4人組。結成時点で全員が実績を持っていた、いわゆる「猛者の集合体」である。

その12枚目のアルバムが本作だ。ワーナーミュージック・ジャパン/Silver Sun Records、全10曲。通常盤はWPCL-13737、初回限定盤には2024年8月の「Live at 野音 2024」をフルサイズ収録したBlu-rayが付く。リードトラックは1曲目の「孤独の先」。

タイトルは『Fire Inside Us』。俺たちの内側の火。派手に燃やすのではなく、内側に抱える。この一語に、4年分の答えが入っている。

アルバム全体の総評

まず言っておきたい。これは「爆発」のアルバムではない。「保温」のアルバムだ。

このバンドは、キャリアの初期には各メンバーのプレイがせめぎ合うスリリングなアレンジを持ち味にしていた。技巧の見本市。誰も一歩も引かない4人の殴り合い。だが2019年の『By Your Side』以降、彼らは明確に方向を変えてきた。鎧を一枚ずつ脱ぐように、アンサンブルをシンプルに磨き、歌とメッセージを前に出す。『ANSWER』でその方向性は一つの完成を見た。

本作は、その延長線上にある。ただし、より徹底している。全10曲、うち3曲は先行配信済み。数字だけ見れば守りに入ったアルバムに見えるだろう。実際、初聴きの印象は「思ったより暴れない」だ。だが、それが狙いだ。タイトルが宣言している通り、火は内側にある。表面で燃やさない。

村松拓の歌が、本作では明確に主役だ。かつては生形と日向のギターとベースが会話するその隙間を縫うように歌が乗っていたが、今は歌が中心にあり、演奏がそれを支える構図になっている。技巧派バンドが「歌のバンド」になる。この変化を成長と見るか、牙を抜かれたと見るか。そこがこのアルバムの評価の分かれ目になる。

僕は成長だと思う。ただし、少しだけ寂しい。その理由は後で書く。

孤独の先

リードトラック。MVも公開されたアルバムの顔だ。孤独を否定せず、その先にある希望を描いた曲だと説明されている。ここが重要で、「孤独を乗り越えろ」ではなく「孤独の先」なのだ。否定しない。抱えたまま歩く。4年の沈黙を経た1曲目に、この静かな肯定を置く。派手なリフで殴りに来ないその選択に、バンドの現在地が出ている。これは刺さる。

Find the Color

色を探す。1曲目の孤独から、2曲目で色を探しに出る。この並びは明らかに物語だ。単曲配信もされているこの曲が2番手に来ることで、アルバムは内省から行動へと動き出す。導入としての役割を完璧に果たしている。

All We Have feat. Masato (coldrain)

本作唯一の客演曲にして、話題の中心。coldrainのMasatoを迎えたこのナンバーは、2024年11月8日に先行配信されている。日本のラウドシーンの顔をゲストに呼ぶ。技巧のバンドとラウドのバンドが交わる地点で何が鳴るのか、その答えがここにある。序盤3曲目という早い位置に置いたのは、アルバムの温度を一気に上げるためだろう。これは効いている。

It Burns to Save You

燃える、という動詞がここで出てくる。アルバムタイトルの「Fire」と直接呼応する曲名だ。お前を救うために燃える。この直球すぎるタイトルを、湿っぽくならずに鳴らせるのがこのバンドの強みだ。中盤の入口を担う重要曲。

Black Train

黒い列車。彼らの語彙にしては珍しく、ブルースやハードロックの匂いがするタイトルだ。生形のギターが最も獰猛に鳴るのは、たぶんこのあたりだと踏んでいる。アルバムに影を落とす一曲。

Looking for a Reason

理由を探して。2曲目で色を探し、6曲目で理由を探す。「探す」という動詞が繰り返されるのは偶然ではないだろう。答えを提示した『ANSWER』の次のアルバムで、また探し始める。この誠実さというか、往生際の悪さが、僕はこのバンドの一番好きなところだ。

MOONRISE

月の出。全曲中もっとも情景が浮かぶタイトルで、アルバム後半への転換点に置かれている。夜が明けるのではなく、月が昇る。太陽を選ばないところに、このバンドの美学がある。

シリウスの月

本作で最も詩的な曲名。シリウスは冬の夜空で最も明るい恒星で、そこに「月」を掛ける。天文学的には妙な取り合わせだが、だからこそ言葉として立っている。日本語詞の曲がこの位置にあることで、終盤に向けて情感が一段深くなる。全10曲中、日本語タイトルは1曲目とこの曲だけ。挟み込むような配置が美しい。

May

先行配信曲。5月なのか、助動詞のmayなのか。どちらとも取れる一語のタイトルは、このバンドがよく使う手だ。終盤に既発曲を置くのは、アルバムの着地を安定させるため。実際、この位置で聴くと配信で聴いたときと印象が変わるはずだ。

Everything

そして「Everything」で幕を閉じる。すべて。孤独から始まり、色を探し、理由を探し、月を見て、すべてに辿り着く。この曲順は、明らかに設計されている。先行配信曲をラストに据えるのは勇気がいるが、タイトルの包括性がフィナーレにふさわしい。締めとして正しい。

良かった点

第一に、曲順の設計。孤独の先→色を探す→理由を探す→月が昇る→すべて。10曲という短さの中に、明確な旅の構造がある。ベテランの手つきだ。第二に、村松拓の歌の説得力。かつてのNCISは「演奏がすごいバンド」だったが、今は「歌が届くバンド」になった。この転身を、看板を下ろさずにやり遂げた。第三に、客演の使い方。10曲中1曲だけにゲストを置き、しかも序盤に配置する。話題性に頼りすぎず、アルバムの起爆剤として機能させている。賢い。

物足りなかった点

正直に書く。物足りない。この言い方が誤解を招くなら、こう言い直そう。安全すぎる。

10曲のうち3曲が先行配信済み。つまり新鮮な驚きは7曲分しかない。4年待った身としては、この収録数は少ない。そして音楽性においても、『ANSWER』からの地続きの進化ではあるが、断絶や飛躍はない。あの初期の、4人が音で殴り合っていた時代のスリルを愛した人間にとって、本作の成熟は少し物足りなく響くはずだ。ここは惜しい。

内側に火を抱えるのは美しい。だが、たまには外に出して燃やしてほしい。4年も待たせたなら、なおさらだ。

どんな人に刺さるか

まず、『By Your Side』以降のNCISが好きな人。この路線の一つの到達点なので、迷わず聴くべきだ。次に、30代以降のリスナー。孤独を否定せず抱えて歩く、という本作のテーマは、若さで押し切れなくなった年齢にこそ響く。そしてcoldrain経由でこのバンドに触れる人にも、入口としてちょうどいい。

逆に、『PARALLEL LIVES』や『Silver Sun』の頃の、技巧が火花を散らすNCISを求めている人には物足りない。そういう人は素直に初期作を掘った方がいい。今の彼らは、別の場所に立っている。

評価

8点/10点

ベテランバンドの12枚目として、極めて高い水準だ。曲順の設計、歌の説得力、客演の配置。どれも隙がない。減点の2点は、先行配信3曲を含む10曲という物量の薄さと、4年という沈黙に見合うだけの飛躍がなかったこと。名盤とは言わない。だが、間違いなく良盤だ。そして、良盤を12枚出し続けることの異常な難しさを、僕らはもっと評価すべきだと思う。

締め

内側の火。派手に燃え上がるのではなく、消さずに保つ。18年やってきたバンドが辿り着いた答えが、これだ。

若いバンドは外で燃やす。燃やさないと誰も見てくれないから。だがキャリアを重ねたバンドは、燃やし続けるより、消さないことの方が難しいと知っている。1年に1枚出していた頃の彼らは外で燃えていた。4年黙った彼らは、内側で温めていた。どちらが正しいという話ではない。ただ、火が消えていなかったという事実だけが、10曲を通して静かに証明されている。

孤独の先に何があるのか。このアルバムは答えを教えてくれない。ただ、孤独を抱えたまま歩いていいと言ってくれる。それで十分だ。次は4年も待たせないでほしい。こっちの火も、そう長くは保たない。

ではまた。