覆面バンドは簡単には売れない。
こんにちはmonaです。
いきなりだが、ここ数年で邦楽の覆面バンド、明らかに増えていないか。
覆面でインパクトを狙って一儲けしたいのか。それともバンドはやりたいけど顔を出すのが恥ずかしいだけなのか。僕は前者が多数派だと踏んでいるが、あなたはどっちだと思うだろうか。
10年ほど前まで、邦楽ロックの覆面バンドといえばFACTやBEAT CRUSADERSくらいしか思い浮かばなかった。それが2010年以降、this is not a businessやXmas Eileen、MOTHBALLといった覆面バンドが次々と現れている。今日はこの「覆面バンド」という商売について、少し意地悪く考えてみたい。
設定がゆるい覆面と、設定が重い覆面
まず面白いと思ったのがMOTHBALLだ。
MOTHBALL / Mayday
公式プロフィールによれば、彼らは遠い銀河系からやってきた2体のエイリアン、Kフレア(赤)とアイスG(青)による宇宙海賊チーム。地球侵略の野望がいつしか地球への愛に変わり、通りすがりの人間をちょっと洗脳して結成したのがMOTHBALL BANDなのだという。
曲は良い。良いのだが、設定は意外とあっさりしている。エイリアン2体、以上。この潔さも嫌いじゃないが、せっかく被るならもう一声ほしいところだ。
では、設定がゆるそうな代表格MAN WITH A MISSIONを調べてみたら、こちらは逆だった。
MAN WITH A MISSION / Dark Crow
公式の設定を要約すると、こうだ。戦禍の20世紀、天才生物学者ジミー・ヘンドリックス博士(趣味:ギター)が生み出した究極の生命体、それがMAN WITH A MISSION。超人的な頭脳と肉体ゆえに権力者たちに暗躍させられ続け、罪悪感に苛まれた博士は、彼らを南極の氷河に封印する。愛用のギターを燃やし、命と引き換えに。時は流れて2010年、皮肉にも地球温暖化が氷の棺を溶かし、彼らは永い眠りから目覚めてしまった、という壮大な物語である。
そこそこどころか、かなり凝っていた。温暖化で復活する下りまで含めて、よくできている。
ただしMWAMに関しては、そもそも覆面バンドなのかどうかがグレーだ。本人たちは覆面であることを否定している(彼らは被り物ではなく、本物のオオカミ男という建て付けだ)。この「覆面と呼ばれることすら拒否する」徹底ぶりこそ、後で書く僕の持論の理想形だったりする。
ビークルの覆面は、キャラ作りではなかった
そもそも僕自身、覆面バンドという存在を知ったのはBEAT CRUSADERSだった。
BEAT CRUSADERS / E.C.D.T.
調べてみると、彼らがお面を着けた理由は、設定でもインパクト狙いでもなかった。結成当時、ヒダカトオルはインディーズレーベルLD&Kの正社員、つまりサラリーマンだった。顔がわからないようにするための実用的なお面だったという説が一つ。もう一つは、インディーズ時代に顔写真のフライヤーで顔を隠して撮ってみたら、初期のYMOやDEVOのようで面白かったから、という説。顔や見た目で判断されるのが嫌だった、というルッキズムへの抵抗説も当時のインタビューには見られた。
つまりビークルの覆面は、キャラ作りでも何でもない、事情と偶然の産物だった。それなのに、結果として他のどのバンドより目立った。そしてメジャー1stフルアルバム『P.O.A.〜POP ON ARRIVAL〜』はオリコン最高3位、18万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。覆面を「売るための装置」として設計しなかったバンドが、覆面バンド史上屈指の成功を収めている。この皮肉は覚えておいていい。
物申す。大仏の覆面、あれは売れない
BEAT CRUSADERSもMAN WITH A MISSIONも、インパクトがあって曲も良い。「そりゃ売れるだろうな」と納得できる。ただ、どうしても一つだけ物申したいことがある。
大仏の覆面を被ったバンド。あれは絶対に売れない。

インパクト狙いで被っているのかもしれないが、大仏の覆面バンドは実は何組もいて、まったく珍しくないのだ。被った時点でオンリーワンになれない覆面に、何の意味があるのか。もういっそ脱いで演奏した方がいいと思うレベルである。
そして覆面バンドを名乗るなら、家の中以外は覆面でいるくらい徹底してやってほしい、というのが僕の願いだ。とはいえFACTもBEAT CRUSADERSも、ライブでは時々覆面を外して演奏していた。顔出しするのかよ、とツッコミたくなる。なるのだが、何時間もお面を被ってライブする辛さを想像すると、責める気にもなれない。あれは物理的に地獄だ。
BEAT CRUSADERSもMAN WITH A MISSIONもインパクトもあって曲も良いので「売れるんだろうな~」くらいの予想はつくのですが、どうしても一つだけ物申したいことがあります。
覆面は「肩書き」である
それでも覆面バンドという形態には、確かな効能がある。
覆面バンドがあったからこそ、解散して別のバンドで活動していても根強い人気が続く。言い方は悪いが、肩書きというのは大事なのだ。「元・あの覆面バンドの」という一行は、一生ついて回る名刺になる。
そして覆面バンドは登場時のインパクトが強いぶん、売れたときのリスナーの推しっぷりが凄まじい。素顔がわからないからこそ、ファンは音と世界観に全額投資する。つまり覆面バンドを生かすも殺すも、最終的にはリスナー次第ということだ。
結論。覆面バンドで売れるハードルは、素顔のバンドより高い。被った瞬間に注目は集まるが、その注目は「で、中身は?」という試験でもある。設定を作り込むなら作り込む、実用なら実用と割り切る、脱がないなら死んでも脱がない。中途半端が一番売れない。覆面で食っていくつもりなら、覆面にこそ本気を出した方がいい。
ではまた。

